2008年6月26日
於(特活)NPOサポートセンター

東京都公益認定等審議会に「公益目的事業の判断基準(案)」の撤回を求める記者会見
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出席者(発言順)
山岸秀雄 (特活)NPOサポートセンター理事長
補足説明 富永さとる NPOサポートセンター主任研究員
堀田 力 (財)さわやか福祉財団理事長
菅原敏夫 (財)地方自治総合研究所研究員
杉澤幹生 (特活)NPO支援機構すぎなみ事務局長

東京都公益認定等審議会に「公益目的事業の判断基準(案)」 の撤回をもとめる声明
2008年6月26目
東京都中央区銀座8-12-11
(特活)NPOサポートセンター
理事長 山岸秀雄

<主旨>
東京都の公益認定等審議会におかれては、パブリック・コメントに付している「公益目的事業の判断基準(案)」を撤回するよう求めます。.

<理由の要旨>
同「判断基準(案)」は、公益法入認定法の法定要件を逸脱して、民間公益団体の公益認定に不当な要件を諦し、官製天下り法人を優遇する裁量行政温存に道をひらくものであるため。

<理由>
NPOのナショナル・センタ中である私たち(特活)NPOサポートセンターは、 NPO法人(特定非営利活動法人)制度の他に、公益法人改革による新しい法入法制がNPOセクターの活用領域を拡大する可能性について注目しています。
今回の公益法人改革の積極面は、(1)主務菅庁制の裁量行政を廃止し、法人格白体は準則主義で取得できる上、公益性については法定要件にもとづき民間入からなる合議制機関が、白由な創意工夫による民間公益活動を促進する方向で公益譚定をできること、また、(2)公益認定を受けた法入については本来事業非課税という民間非営利公益法人にとって当然の税制上のポジションがやっと創設されることにあると言えます。

小規模法人のための特例がないこと、収支相償規定のように本法のレベルで見直した方が良いと思われる要件があることなど問題はいくつか残るものの、行政の価値観・裁量から白由な制度に変わること白体は改革の第1歩としてプラスに評価されます。

ところが、今回突然、東京都の公益認定等審議会がパブリック・コメントに付している「公益目的事業の判断基準(案)」(以下、「判断基準(案)」)は、裁量行政による主務官庁制の温存・復活につながるものであり、到底容認できるものではありません。

「判断基準(案)」の具体的な問題点の柱を列挙すると下記のとおりです。

◆1 不当な横出し規制で裁量行政に道をひらき、官製天下り法人に有利になるよう.に民
間団体に参入障壁を設けている。
◆2 「不特定かつ多数の者の利益」を曲解した不当な上乗せ規制を行っている。
◆3 個別法が求めてもいない法人格の縦割りによる棲み分けを強制している。
◆4 策定プロセスが密室で不透明に進められた。

以上の理由により、「判断基準(案)」の白主的な撤回を求めるものです。(以上)

担当:主任研究員 富永さとる
電話:03-3547-3206
E・mai:tominaga@npo-sc.org

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2008年6月26目
(特活)NPOサポートセンター
東京都の「公益目的事業の判断基準(案)」についての問題提起

東京都公益認走等審議会の「公益目的事業の判断基準(案)」の具体的問題点は次の通り
です。

◆1 不当な横出し規制で裁量行政に道をひらき、官製天下り法人に有利になるように民間団体に参入障壁を設けている。

判断基奉(案)は、その第5(内容)において、本法の要件から逸脱する新たな要件を勝手に創設しています。
公益法人認定法における「公益目的事業」の要件は、「別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」であるにも関わらず、判断基準(案)の第5は、「別表各号に掲げる種類の事業」であることの他に、なおかつ、以下の(1)~(4)、東京都公益認定等審議会が考える「基本理念」に沿っていること、規模が大きいこと、を余分な要件として課しています。

(事業の内容)
第5事業は、認定法の別表各号に掲げる事業分辱セあり、以下の各号のいずれかに該当し、かつ認定法第1条の目的及びこの基準の第2に掲げる基本理念に沿う内容(規模を含む)のものであることが必要である。
(1)社会経済情勢の変化や多様な住民二ーズに対応して、民間の団体が白発的に行う事業については、広く茸会に利益をもたらすものであること。
(2)公共の福祉に直接貢献ずることを目的として、法令により民間の団体が行うものとされている事業及び補功金等により民間の団体が行うことを促進する事業にっいては、当該、 法令又は補助金等の目的及び要件に準拠しそいること。
(3)前号に掲げる事業と類似の事業については、その事業目的等に応じて、社会にもたらす利益が同等以上のものであること。
(4]行政からの受託事業については、公共の福祉に直接貢献することを目的としで民間の団体の専門性・効率性を十分に発揮したものであること。

これは、住民・市民が公益認定を受ける権利を不当に狭める事実上の立法行為であり、法解釈の裁量の範囲を逸脱しています。これでは、不認定を受けた団体が行政訴訟・国家賠償請求訴訟を提起すれば、東京都の敗訴は間違いなく、都民の税金が無駄に浪費されることにもつながります。

特に問題と思われる条文は、(3)と(4)です。

(3)は、既得権益をもつ官製天下り法人と伺種の事業を行う民間の非営利法人を公益認定から排除する働きをもたらすものであり、民間の非営利法人に法定要件よりも余分なハードルを課すことにより、官製天下り法人の特権を温存する結果をもたらします。今回の改革でせっかく廃止されることとなった、「1事業分野1法人」という悪しき護送船団方式を温存・復活させるもので、民間の創意工夫による健全な競争・.効率化を妨げるものです。

・「社会にもたらす利益」は数字にして相互の大小を比較することは困難であり、裁量行政にしかなりようがありません。

・また、たとえ、受益者の規模を単純に比較できるケースであって、その数が少ないとしても、公益法人認定法にはそれを問題とずる要件はありません。「不特定かつ多数の者の利益」とは、受益の機会が一般(the general public=一般公衆=不特定多数の者)に開かれているかどうかが本質であって、数の多少の問題でないことは、内閣府公益認定等委員会のガイドライン・チェックポイントでも明らかとされています。それぞれの団体の体力・身の丈に応じた「一般への開放」の範囲でサービスを供給する法人が数多く出てくることが、公共サービスの総供給量を最大化する道です。,

(4)についても同様に、どのように「専門性・効率性」が「十分に」高いかを測定するのか、その方法が不明であり、裁量行政に道をひらぐものであることは明らかでず。そもそも公益法人認定法には「効率性」を問題とする条文は存在しません。東京都の出資している法人など、具体的に特権を擁護したい存在があるのではないかと疑われます。

(1)についても「広く」とは、何を測定して、いかなる線引きの基準を用いるのか、まったく不明です。

同様に、「基本理念」についても、「公益の増進に寄与するものとして、都民からの支持や支援を得られるものであること」というのを誰が、どのよう,な基準で線引きするのか不明であり、事務局や審議会委員の個入的価値観を「都民の支持・支援」の名で押しつける,ことが可能となります。

国の法体系は、民間非営利セクターとの対話を織り交ぜながらの一連のプロセスの結果、公益法人認定法、政令、内閣府令、ガイドライン・.チェックポイントと、順次、抽象概念を操作可能(測定可能)な具体レベルへと落とし込んでいます。これに反して、東京都が今回、ガイドラインよりも下位と称する「判断基準(案)」,において、測定方法が不明の抽象概念を敢えて持ち出すのは、裁量行政を廃するという今回の改革の主旨を理解していないのか、あるいは、むしろ裁量行政を復活・温存させる意図をもっているのではないかとすら疑われます。

◆2 「不特定かつ多数の者の利益」を曲解した不当な上乗せ規制を行っている。
判断基準(案)の「第4 (事業の対象)」は、国のガイドライン・チェックポイントに比 べて、不当に要件を狭くするものであり、これでは合議制機関(公益認定等審議会)は、東京都の事務局の出した結論を追認するだけの機関となってしまいます。

国が示したガイドライン・チェックポイントでは、「検査検定」「資格付与」「講座、セミナー、育成」等の典型的な17事業形態につき、着眼点を提示し、それをクリアしているも のは簡便なチェックのみで「不特定多数の者の利益」であると認定する他、これらにあてはまらないものについても、合議制機関が個別に実質審査をおこないOKを出せるようになっています。

ところが、東京都の判断基準(案)は、まったく逆向きに、「以下のいずれかに該当している必要がある」として、いくつかの類型に当てはまらない限り不認定とするものです。これでは、公益認定の範囲が狭まってしまう上、合議制機関は事務局が出した結論を追認するだけの機関と化してしまいます。

(事業の対象)
第4事業の対象については、以下のいずれかに該当している必要がある。
(1)事業の対象者について要件を課していないこと。
(2)事業の対象者について一定の扇性や資格等の要件を課している場合は、事業の目的を実現するために必要な要件であると認められること。
(3)事業の対象者について法人の構成員のみに限定していないこと。但し、認定法の別表各号の事業目的に直接貢献する場合はこの限りではない。
(4)事業の対象地域が最小行政単位である区市町村区域以上であるとと。又は、その区域の歴史的経緯等から区市町村区域に準ずると認められるものであること。
(5)事業の対象が特定の施設や区域であっても、その施設や区域の利用者が主として区市町村区域と同等以上とされていること。

また、事業の対象地域を区市町村区域以上とすることも国のガイドライン・チェックポイントよりも高いハードルを課すもので、小規模法人への参入障壁となります。震災により集中的に被害を受けた地区の復興支援をミッションとする団体や、複数の市区町村の一部ずつにまたがる団体など、行政の区域割りに縛られない団体はいくらでも想定され、そこにこそわざわざ行政と別に民間公益活動の受け皿法制を整備する目的があります。

◆3 個別法が求めてもいない法人格棲み分けを強制している。
判断基準(案)は、「第7(個別法との関係)」において、医療法、社会福祉法、私立学校法などの個別法により法入格を得ることができる事業については、原則として公益法入ではなく個別法に基づく法人(医療法人等)として事業を行うことが適当としています。

しかしながら、それぞれの個別法において}き、病院、第二種社会福祉事業、各種学校・専修学校は、特定の法人格ではなく誰でも営むことができるとしており、これもまた、東京都による権限を逸脱した不当な立法行為と言わざるを得ません。憲法21条結社の白由、13条幸福追求権に対ずる合理性なき制限であり、強い違憲の疑いがあります。

行政の他にNPO等の民間公益活動の受け皿が要請された社会的背景には、行政や法律の縦割りを超えた横断的なサー.ビスによるイノベーションの要請があり、判断基準(案)のこの規定は、改革の目的を損ねるものです。また、都の各部署の既得権益を守ろうとするものなのではないかと疑われます。

◆4 策定プロセスの情報公開が不十分で密室で不透明に進められた。

東京都の公益認定等審議会は、その審議内容をほとんど情報公開していません。公表されている議事概要では、議事の内容について「4議事概要 公益認定の考え方等について審議を行いました。」と書いてあるだけです。このような不透明な密室審議で判断基準を決めるのでは、民間の有識者からなる合議制機関に判断権を付与した意味がありません。

また、このように密室で不透明に進められる策定プロセスが全宙に普及してしまうことがあれぱ、由々しき事態です。

以上のような問題をもつ東京都の「判断基準(案)」の動きに他の道府県が追随するようなことがあれぱ、せっかく法制上実現した本来事業非課税という税制優遇制度が、他の法人格に広がるどころか、ご破算になってしまう危険性もあります。

他にも「判断基準(案)」には問題がありますが、今回は緊急に主な問題を指摘するものです。

以上の理由から、私たち(特活)NPOサポートセンターは、東京都公益認定等審議会に対して、「公益目的事業の判断基準(案)」を撤回ずるよう求めるものです。(以上)